大阪大学人間科学部／大阪大学大学院人間科学研究科

　人はなぜ失敗をするのでしょうか？「ついうっかり」としか言いようのないエラーにもその理由があるはずです。そこでパソコン等を用いた日常的な認知課題や、自動車・鉄道運転場面など実際の作業中に生起するエラーの発生メカニズムを技能、注意、習熟、ユーザビリティなどの観点から実験的に解明しています。

これまでの共同研究実績

PICK UP!のある研究は以下で概要を紹介しています

・PICK UP!「高覚醒水準下における対処法の有無が行動特性に及ぼす影響」（H25年度JR西日本安全研究所との共同研究）

・「高覚醒水準下におけるエラー低減に関する基礎的研究」（H24年度JR西日本安全研究所との共同研究）

・「高覚醒水準下の注意・行動特性に関する基礎的研究」（H22-H23年度JR西日本安全研究所との共同研究）

・PICK UP!「運転自己評価とリスク補償の観点から見た経験と運転パフォーマンスの関係」（H22年度ヒューマンサイエンスプロジェクト研究）

・「運転士の注意配分と、乗務員指導への活用に関する実践的研究」（H20-H21年度JR西日本安全研究所との共同研究）

• 「高覚醒水準下における対処法の有無が行動特性に及ぼす影響」（JR西日本安全研究所との共同研究）

　ヒューマンエラーについては、覚醒水準（脳活動の活発さ）の低い状態はもちろんのこと、極端に高い状態でも生じやすいとされています。ただし、このように覚醒水準が高い状態でのエラーに関する研究はあまり進んでいません。そこでJR西日本安全研究所との一連の共同研究では、高覚醒水準下における心理や行動について実験的に検討・分析を行ってきました。その中で、特に本研究プロジェクトでは、過度な覚醒水準下において「呼吸再訓練法」（上がり過ぎた緊張感や不安感等を平常時に戻すことを目的とした特別な呼吸法）を実施することによるエラー低減の可能性について実験的に検討しました。


実験において高覚醒状態を引き起こすために、タイムプレッシャーの掛った緊急時の作業を模した実験を実施しました。実験では、視覚的（光）、聴覚的（音）、触覚的（風圧）な刺激を参加者に与えることで焦りを喚起させています。

関連する研究業績

・Ueda, M.,Wada, K., and Usui, S. 2016 Behavioral characteristics in Emergencies: Comparison before and after a time limit, 応用心理学研究(英文特集号) , 42(Special Edition), 3
・上田真由子・和田一成・臼井伸之介　2015　特別な呼吸法の事前実施が緊急事態時の行動を改善させる，感情心理学研究，22 (3), 103-109.
・Mayuko UEDA，Kazushige WADA，Shinnosuke USUI 2013 Behavior under High Arousal Conditions: On the Difference between High Optimists and Low Optimists, Special Issue on TRANSLOG2012 & J-RAIL2012(Journal of Mechanical Systems for Transportation and Logistics, Vol.6, No.2, 100-110.
・上田真由子・和田一成・臼井伸之介 2013 特別な呼吸法の事前実施が高覚醒水準下の行動に及ぼす影響，日本心理学会第76回大会発表論文集, 1168.
・Mayuko Ueda，Kazushige Wada，Shinnosuke Usui 2013 Human Behaviour under High Arousal Conditions, 9th International Conference on Cognitive Science, Kuching, Sarawak, Malaysia.

• 「運転自己評価とリスク補償の観点から見た経験と運転パフォーマンスの関係」（H22年度ヒューマンサイエンスプロジェクト研究）

　運転場面における運転経験と運転パフォーマンス（事故歴・違反歴含む）はこれまでの先行研究によって関連するとされていますが、経験に伴ってドライバーの何が変化することによって運転パフォーマンスに影響を及ぼすのかは明らかではありません。そこで、リスク傾向、リスク補償、自己評価スキルの3側面に着目し、経験によってこれらが異なるのか、またこれらの差異が運転パフォーマンスの違いをもたらしているのかについて、ドライブレコーダを用いた実車実験によって検証しました。


自動車教習所の協力を得て実施した実車実験の様子（写真左）とドライブレコーダの解析画面（写真右）

関連する研究業績

・Nakai, H. & Usui, S. 2017 How do user experiences with different transport modes affect the risk of traffic accidents? From the viewpoint of licence possession status. Accident Analysis and Prevention, 99, 242-248.
・Hiroshi NAKAI & Shinnosuke USUI 2012 Comparing the self-assessed and examiner-assessed driving skills of Japanese driving school students,　IATSS Research, 35, 90-97.
・Nozomi RENGE, Hiroshi NAKAI, Shinnosuke USUI 2012 The relationship between driving behaviours and cognitive functions among elderly drivers. 5th International Conference on Traffic & Transport Psychology, Groningen, the Netherland.
・中井　宏・蓮花のぞみ・臼井伸之介 2012 場面別に見た運転技能の年代差, 日本交通心理学会第77回大会発表論文集, 19-22.